三菱ミニキャブバンとトヨタヴォクシーのシート
4月5月と続けて選挙カーの運転を請け負って、ミニキャブバンとヴォクシーを運転したのだ。選挙カーの運転はぶっ通しで6時間行いその95%は渋滞さながらの低速運転で、残りの5%は一般幹線道の流れに乗った運転となる。
4月に乗ったのがこちらのミニキャブバン。
現代版の軽自動車サイズなのでまぁまぁ広くなったけど、垂直に近いフロントウィンドウなので自動的にメーターパネルの奥行は小さくなり、アップライトなドライビングポジションとなる。
シートのサイズは必要最小限のもので、あんこも薄めでどこを取っても実用的。ラグジュアリーの”ラ”の字すらどこにも無い、無愛想なバンである。
エンジンは自然吸気3気筒、ミッションは3AT。4人乗車で幹線道を走るには、気合を入れる必要があった。しかし街宣中はコントローラブルな素直な挙動でとても運転しやすかった。特にエンジンは良くできていて、さすがゼロ戦譲りと感心した。
5月に乗ったのはこちらのヴォクシー。
こちらはいわゆるファミリーカーで、シートはモケット張りだしカーペットも敷いてあるし、ミッションはCVTだしメーターパネル周りもゆとりがあるしで、値段が倍半分以上違うだけのことはある。
しかしエンジンが2000㏄に対して図体は大きく重く、空気抵抗も大きく、4人乗車で幹線道を走るのはやっぱりしんどかった。更に進直性がとても悪く2ケタ国道を法定速度で走ると、ハンドル修正に気を使わされることに驚いた。足回りが緩すぎるのである。
この2台のクルマ、結論としてはミニキャブバンの方が疲れなかったのだ。何故なのか。
クルマ雑誌を読んでいると”シートの出来が良い”とか、”シートが合わず長距離を走ると腰が痛くなった”といった表現を良く見る。この文章の主語はシートであるが、今回2台の選挙カーを運転し、更に自分のアウディとメルセデスと比較して、疲労が少ないシートの要件が分かった気がする。
座っているのはシートなので、腰が痛くなったり肩が凝ったりするのはシートの良し悪しであるように感じるが、実際にはもっと総合的なレイアウトとバランスの集合体によって、痛みや疲れがもたらされることに気づいた。
これには沢山の要素が関係していて、思いつくままに列記してみると、、、、
・ハンドルのグリップ経
・ハンドルの直径
・ハンドルスポークの位置
・ハンドルとブレーキペダルの位置関係
・ブレーキペダルとアクセルペダルの位置関係
・各ペダルの位置と動作半径
・各ペダルの踏込角度
・アクセルペダルの反発力
・アクセルペダルのストロークとスロットル開度の関係
・各ペダルの床からの距離
・ハンドルとスカットルの位置関係
・フロントウインドウの傾斜角
・シート座面の床からの高さ
・シート座面の前後長
・ヘッドレストとシートバック面との段差寸法
まだあるかもしれないけど、運転の疲れにはこんな要素が関係しているのである。もちろんすわり心地の良いシートも大切だけど、もっと大切なのはそのシートに座って手足を動かし目から情報を得るという、総合的な身体運動をするということについての理解である。
ミニキャブバンはアップライトな姿勢を維持するのに最適なパーツ配置であった。
ヴォクシーはラグジュアリーなのかアップライトなのかはっきりしない中途半端なセッティングであった。ミニバンと言えば少しは響きも良いがしょせんはマイクロバスなのだから、商品コンセプトをしっかり煮詰めないとダメ。まぁそうは言ってもこのクルマ、幼稚園の送り迎え位にしか使われないのだろうから、こんなもんでいいのかも。
ということで、クルマの奥深さがまたひとつ分かった良い体験であったのだ。